信州北木曽路  短歌の詠みたくなる風景マップ クリック(Click)

短歌作品募集企画入賞作品を紹介します

楢川の風景画像を詠んだ短歌作品を募集したところ、北は北海道から南は鹿児島県、25都道府県より151作品をお寄せいただきました。審査員による審査会を開催し各賞を決定しましたのでご紹介いたします。

審査員 短歌館・藤森円による総評

今回このような選考の機会をいただいたことを、主催者の皆様、そして何より投稿してくださった皆様に、感謝申し上げます。この中から入賞歌をたった三首に絞り込むという行為はなかなか心苦しく、七音さんと共に断腸の思いで決めさせていただきました。
一つのイメージから、人の心を通して言葉が紡ぎ出される現象は、奇跡ともいえるほどかけがえのないものです。しかし短歌コンテストの性質上、一歩進んで、一首が魅力的に立ち上がっているかどうかを最優先に選ばせていただきました。
最優秀賞の一首「三歳の高さで見よう」難しい語句でないにも関わらず、魅力的ではありませんか。わずかな言葉で読者を引き付ける奇跡に、この短歌コンテストでたくさん出会うことができました。今回の投稿を機に、より多くの奇跡を生み出していただければ幸いです。

審査員 七音からのメッセージ

皆様、素敵な作品を寄せていただきありがとうございました。選びたい作品、ご紹介したい作品があまりにも多く、その中で、大変迷いながら「楢川を旅したくなる短歌」というテーマに軸を置き、丁寧に選ばせていただきました。どれだけ心を動かされたか、楢川の情景をスッと思い浮かべられるか、また表現として詩的であったり新鮮さやユーモアのあるものなども、短歌を楽しんでいる大切な気持ちとして、注目させていただきました。ご紹介できなかった作品も、すべて大切に楽しませていただきました。心より、感謝申し上げます。

最優秀賞

三歳の高さで見ようならかわの
山と桜が手を繋ぐ春

神奈川県横浜市 「きいろ」さんの作品

選択画像①

写真を見て、山と桜が仲良く手を繋いでいるように見えると感じました。そんな春の景色を、三歳の娘と同じ高さで見たいという気持ちを表現しました。

藤森円の感想

「三歳の高さ」は魅力的です。例えば、作者が三歳の幼子の目線の高さにしゃがみ込み、春の山と桜の花を擬人化させて、幼子に語りかけている。楽しい想像を掻き立てますね。

七音の感想

「三歳の高さ」に、幼子の目線やテンポに寄り添う愛情や、仲の良い穏やかな時間を感じます。また、山に桜が被さる様子を「手を繋ぐ」とした独創的な表現が素晴らしいです。

優秀賞

山菜の天麩羅蕎麦を食む吾は
清し若葉の一芽とならむ

長野県塩尻市 土田安子さんの作品

選択画像①

山菜の天ぷら添えの盛り蕎麦が大好きです。三人前でも行けそうです。それを口にすると全身が自然の中に溶けていき自然の一部になってしまう気がします。

藤森円の感想

「清し」を連体形で取る向きもありますが、私は正しく終止形と読みます。よって清しいのは若葉でなく作者自身となり、天婦羅蕎麦を食べるこの上ない喜びが立ち上がります。

七音の感想

「清し若芽」から青空のような爽やかな情景が浮かび、「山菜の天麩羅蕎麦」から春の香りや、旅での楽しい食事の様子が想像できます。笑顔あふれる春の旅路に心惹かれる作品です。

秀作賞

約束を覚えていたのか今日ひとつ
明日またひとつと雪兎くる

長野県松本市 「はかり」さんの作品

選択画像③

冬の「奈良井宿アイスキャンドル祭り」は、静かな闇の中で、幻想的な時間が過ごせます。キャンドルの隣に置いてある「雪兎」も、聖なる感じがして楽しいです。

藤森円の感想

忘れられていたかもしれない過去の約束を、丹念に遂行していく幻影の雪兎。それは愛情かもしれないし、憎悪かもしれない。第二句までの作者の独白が、とても効果的ですね。

七音の感想

絵本の世界のような詩的な世界観にとても惹かれます。兎が少しづつ集まるゆっくりな時間の表現がとても上手で、そのお陰で「約束」の内容が気になるとてもファンタジーな作品です。

佳作

入賞には届きませんでしたが素敵で紹介したい作品です。

駆け寄って子は仰ぎ見る六地蔵
きっとこの子は第七地蔵

長野県塩尻市 鳴神 那於哉さんの作品

選択画像④

ある夏の日、その親子は奈良井宿に行きました。長い大通りやら、近くの境内やらを歩いていると、突然、子どもが走り出しました。ちょっと、どこ行くのと思ってついていってみると、とある6体のお地蔵さん達がいました。まじまじと眺めては、深く観察するような眼差しに、親は「きっと、この子って7番目のお地蔵さんかな?」なんて思ってしまいました。

佳作

風吹けば奈良井の古き町並みに
「君のままで」と言われたようで

愛知県瀬戸市 ナカジマさんの作品

選択画像②

急激に変わっていく世界に対応し、自分も変化し続けることを求められて疲弊する毎日。そんな中で昔ながらの日本の情緒を残す奈良井宿を訪れたら、穏やかな時間の流れの中で「自分らしさも大切にしていきたい」と前向きに感じられるのではないかなと思いました。

佳作

新米を送ったでねと留守電の
母の優しき声を聞きたし

長野県安曇野市 城さんの作品

選択画像⑩

折に触れ、何かにつけて心配してくれる母。稔りの新米は格別なものがあり、故郷を思いだす味そのものです。まさに、「故郷の便り」そのものですね。

佳作

「ここいらは夜がくるのが早ぇから」
灯りはゆれる君は微笑む

長野県松本市 「はるののはら」さんの作品

選択画像③

冬の楢川であっという間に日が落ちるのに驚いたときに、一緒にいた方と話したことを題材にしました。長く深い分、豊かな夜の時間が楢川の魅力だと思います。冬の楢川であっという間に日が落ちるのに驚いたときに、一緒にいた方と話したことを題材にしました。長く深い分、豊かな夜の時間が楢川の魅力だと思います。冬の楢川であっという間に日が落ちるのに驚いたときに、一緒にいた方と話したことを題材にしました。長く深い分、豊かな夜の時間が楢川の魅力だと思います。

佳作

月の蛾舞う天の川を泳ぐように
鳥居をくぐり闇夜に消える

楢川小中学校 土川茉奈香さんの作品

選択画像⑥

月の蛾というのはオオミズアオという夏の蛾の事です。鳥居の先には異世界があるという考え方があるので、綺麗な蛾が異世界の使いなんじゃないかと思わせる好奇心を搔き立てる句にしました。

審査結果発表会・表彰式の模様

令和5年4月10日(月)楢川支所において審査結果発表会並びに表彰式を行いました。

審査員をお務めいただいた塩尻短歌館指導員 藤森円さんの総評のあと

優秀賞受賞された土田安子さんに表彰状並びに賞品(木曽漆器の夫婦椀)が贈呈されました。

最優秀賞並びに秀作賞受賞された皆様に本日表彰状並びに賞品を発送させていただきました。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次